「銀」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか?
「銀」は洗練された都会的で進歩的なイメージに対して、相反する「わびさび」や粋といった風情を兼ね備えており、2面性のある色といえるかもしれません。メタリックカラーの割に派手さというよりは、どこかどっしりとしたイメージを覚えませんか?銀色は、自己主張が少ない分、どんな色ともうまく強調できる便利な色でもあります。インテリアでは、石材やガラスなど銀(金属)と同じように冷たい素材との相性がよく、シャープでモダンな印象の空間を演出するにはピッタリの色ですね。
そんな銀色には、まだまだあまり知られていない秘密ゴトがあるのです。
暮らしの中に古くから自然と入り込んでいる銀色のコト、少し覗いてみましょう。

白なのに銀と表現する所以

日本語には銀シャリ、銀世界、銀盤、銀幕など実際には「白」なのに「銀」で表す言葉がありますね。
これらは、どれも鮮やかで光沢感が感じられ、キラキラ、ツヤツヤした印象を持つものです。そんな見た目の印象をより強調するために銀色が使われているのです。なんとなく上質な感じがするのではないでしょうか。
年賀状はがきの印刷に使われている赤を「銀朱」といいます。これも天然顔料の赤よりも人工顔料を使用することによって得られる、鮮やかな発色を特徴とする赤の名称なのです。

銀がもつ存在感

最近は白、黒に押され気味の銀ですが、数年前までは車のボディカラーや携帯電話のボディカラーなど商品カラーの人気色でした。高級感や未来感、洗練された色の印象が人々の気持ちを掴んでいました。パッケージデザインでは、銀といえばアサヒのスーパードライを思い出す方も多くいらっしゃるのではないでしょうか・・・商品発売時、缶ビールのパッケージといえば白かクリーム色が主流だった市場に、大きな存在感をアピールしました。都会的で洗練された銀のイメージに、辛口という味の表現、喉ごしの爽やかさ、冷たさ、キレ、そして消費の中心であった男性に向けた男っぽさもプラスされ、時代にマッチした色とデザインで瞬く間に人気商品に伸し上がった好例でもあります。

”月の金属”と呼ばれてきた銀色

銀は研磨することによりプラチナよりも輝き、昔から月の金属と呼ばれてきました。古代バビロニア帝国の頃には銀製の壺が尊ばれ高価なものとして扱われていました。幸運のシンボルとして、また魔除けの御守りにも用いられてきた色です。吸血鬼には銀の杭、狼男には銀の弾といった面白い言い伝えがあるようです。

もともと銀の食器をもつ家庭は裕福という意味付けから、赤ちゃんに銀色のスプーンを送るという風習が生まれました。意味は少し派生し「いつまでも幸せでいてほしい」という願いの込められた贈り物なのです。
(本記事はwebマガジンに掲載した内容を一部編集しています。)